空調業界の未来は明るい?建設DXとBIMがもたらす「新時代の現場監督」という働き方


「建設業界って、なんだか昔ながらの職人の世界って感じがする…」

「夏は暑くて、冬は寒そう。体力勝負のイメージが強いな…」

「正直、将来性ってどうなんだろう?」


もしあなたが、建設業界や空調工事業界に対して、少しでもこんなイメージを持っているなら。

ぜひ、そのイメージを一旦リセットして、この記事を読んでみてください。


断言します。そのイメージは、もう過去のものです。


実は今、建設業界はITやデジタル技術の力によって、日本のあらゆる産業の中でも、特にエキサイティングな「変革期」の真っ只中にあります。

そして、その変化の波は、私たちの専門分野である空調設備業界の「働き方」を、根本から、よりスマートでクリエイティブなものへと変えようとしているのです。


今回は、そんな空調業界の明るい未来と、テクノロジーがもたらす「新時代の現場監督」という新しい働き方について、ワクワクするようなお話をしていきたいと思います。


そもそも「建設DX」って何のこと?


最近、ニュースなどで「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にしませんか?


「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、簡単に言うと、「デジタル技術を使って、仕事のやり方やビジネスの仕組みを、もっと良くしていこう!」という取り組みのことです。

単にパソコンやスマホを使う、というレベルの話ではありません。

これまで当たり前だったアナログなやり方を根本から見直し、デジタル技術で、より効率的に、より安全に、そしてより快適に働ける環境を創り出していく。それがDXの本質です。


このDXの波が、今、建設業界に大きな変化をもたらしています。


例えば、

かつて多くの人が関わって行っていた広大な土地の測量を、今では「ドローン」がたった数時間で正確にこなしてしまいます。

危険を伴う高所での作業や、重い資材の運搬を、「建設ロボット」が代わりに行ってくれるようになりました。

現場で何か問題が起きても、わざわざ事務所に戻ることなく、「スマホ」や「タブレット」一つで、関係者全員に瞬時に図面や写真を共有し、その場で解決策を話し合えるようになりました。


なぜ今、これほどまでに建設DXが加速しているのでしょうか?

それは、建設業界が抱える「深刻な人手不足」や「働き方改革」といった課題を解決するための、切り札だと期待されているからです。

人の力だけに頼るのではなく、テクノロジーの力を借りて、もっと少なく、もっと多様な人材で、もっと高い生産性を上げていこう。そんな大きな変革が、今まさに起きているのです。


空調業界の未来を変えるゲームチェンジャー「BIM」とは?


さて、そんな建設DXの中でも、特に私たち空調設備業界の未来を大きく変えると言われている、魔法のような技術があります。


それが、「BIM(ビム)」です。


「Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)」の略なのですが、これだけ聞いてもピンときませんよね。


これまでの建物の設計図は、「2D(平面)」で描かれるのが当たり前でした。紙に描かれた線や、パソコンのCADソフトで描かれた線の集まりです。

これだと、専門家でなければ、その線が一体何を表しているのか、完成形がどんな建物になるのかを正確にイメージするのは、とても難しいものでした。


一方、BIMは全く違います。

BIMは、パソコンのデジタル空間の中に、まるで本物そっくりの「3D(立体)」の建物を、最初から建ててしまう技術なのです。


しかも、ただの立体モデルではありません。そのモデルを構成する柱や壁、そして私たちが扱う空調のダクトや配管の一つひとつに、「情報」が詰まっています。

例えば、このダクトはどのメーカーの製品で、材質は何で、価格はいくらで、重さは何キロか…といった、ありとあらゆる情報です。


例えるなら、BIMとは「情報がぎっしり詰まった、デジタル版のレゴブロック」で、建物をまるごと一軒建ててしまうようなもの。

このBIMというゲームチェンジャーが、私たち施工管理、つまり「現場監督」の仕事を、劇的に変えようとしています。


BIMがもたらす「新時代の現場監督」3つの変化


では、具体的にBIMは、私たちの働き方をどう変えてくれるのでしょうか?

ここでは、代表的な3つの変化についてお話しします。


変化1:無駄と手戻りがなくなる「フロントローディング」


「フロントローディング」という言葉があります。これは、仕事の工程のできるだけ早い段階(フロント)に、負荷(ロード)をかけて、後の工程を楽にする、という考え方です。


従来の2D図面では、実際に現場で工事を始めてから、「あれ、空調のダクトを通そうとしたら、天井の梁が邪魔で通せないぞ!」とか、「電気の配線と、水の配管が同じ場所を通ることになってるじゃないか!」といった問題が発覚することが、残念ながらよくありました。

これを「干渉」と言います。

そうなると、工事はストップ。設計をやり直し、資材を発注し直し、職人さんのスケジュールも調整し直し…。膨大な時間とコストの無駄、いわゆる「手戻り」が発生していました。


しかし、BIMを使えば、この問題は解決します。

なぜなら、パソコンの中の3Dモデルで、工事を始める前に、ありとあらゆるシミュレーションができるからです。

空調のダクト、電気の配線、水の配管、建物の骨格となる鉄骨。それらをすべて立体的に重ね合わせ、「干渉」が起きないかを、事前に、ミリ単位でチェックできるのです。


問題点はすべて、工事が始まる前の「計画段階」で解決しておく。

これにより、現場での手戻りは劇的に減り、無駄な残業やコストも大幅に削減されます。

施工管理の仕事は、より計画的に、そしてスマートに進められるようになるのです。


変化2:誰もが直感的に理解できる「見える化」


2Dの設計図面は、プロにとっては当たり前でも、お客様(施主)や、現場に入ったばかりの若手、専門外の職人さんにとっては、まるで暗号のように見えることもあります。

「この線が壁で、この記号が空調機で…」と説明しても、なかなか完成形を共有するのは難しいものでした。


しかし、BIMの3Dモデルなら、その心配はありません。

誰が見ても、完成後の建物の姿を、直感的に、そして正確に理解することができます。

まるで、人気ゲーム「マインクラフト」のように、建物の中を自由にウォークスルーして、「ここの天井は、ダクトが通るとこのくらいの高さになるんですね」「この部屋の空調機は、ここに設置されるんですね」と、誰もが同じイメージを共有できるのです。


これにより、お客様との打ち合わせは格段にスムーズになり、「完成してみたらイメージと違った」というトラブルを防げます。

若手技術者への指示も、より的確に伝えられるようになり、教育のスピードも上がります。


タブレット端末を片手に、現場の実際の鉄骨と、画面上の3Dモデルを重ね合わせながら、「うん、計画通りだ」と確認する。

まるでSF映画のような光景ですが、これが「新時代の現場監督」の当たり前の働き方になっていくのです。


変化3:経験や勘から「データに基づいた判断」へ


これまでの建設現場では、長年の経験を持つベテランの「勘」に頼る部分が、少なからずありました。

「この規模の工事なら、資材はこれくらい必要だろう」「この順番で作業を進めるのが、一番効率がいいはずだ」。

それは素晴らしい職人技ですが、同時に、そのベテランがいなくなると現場が回らなくなってしまう「属人化」という課題も生んでいました。


BIMは、この課題も解決します。

BIMモデルには、必要な部材の数量やコストといった情報が、すべて正確な「データ」として蓄積されています。

そのため、ボタン一つで、工事に必要な資材の正確な拾い出しや、見積もりの作成が可能です。


さらに、BIMに「時間」の情報を加えた「4Dシミュレーション」を使えば、工事が日を追うごとにどう進んでいくのかを、アニメーションで再現することもできます。

これにより、最も効率的で安全な施工手順を、経験の浅い若手でも、データに基づいて計画できるようになるのです。


もちろん、ベテランの経験が不要になるわけではありません。

しかし、これからは、その素晴らしい経験に、BIMという強力なデータ分析ツールが加わることで、若手もベテランも、チーム全体が、より高いレベルで仕事を進められるようになります。


未来の空調業界で求められる人材とは?


どうでしょう?

建設DXとBIMがもたらす未来の働き方が、少しイメージできたでしょうか。


これからの空-調業界、そして「新時代の現場監督」に求められるのは、もはや昔ながらの体力や根性だけではありません。


むしろ、

パソコンやタブレットといった「デジタルツールを使いこなすITスキル」。

BIMのような「新しい技術を、面白いと感じて学ぶ好奇心」。

そして、経験や勘だけに頼らず、「データを基に、論理的に物事を考える力」。


こういったスキルが、これまで以上に重要になってきます。

これは、文系出身の方や、IT業界など異業種からの転職を考えている方にとっても、大きなチャンスがあることを意味しています。

あなたの持つデジタルスキルや論理的思考力が、この変革期の建設業界で、大きな武器になるかもしれないのです。


まとめ:古いイメージを脱ぎ捨て、未来を創る仕事へ


かつて建設業界の課題として語られた「3K(きつい、汚い、危険)」。

そのイメージは、建設DXとBIMの力によって、今まさに過去のものとなろうとしています。


これからの業界が目指すのは、

適切な「給与」が支払われ、

きちんと「休暇」が取れ、

未来への「希望」が持てる、

「新3K」が当たり前の世界です。


空調設備の仕事は、社会に不可欠なインフラを支える、誇り高い仕事です。

その伝統的な仕事が、今、テクノロジーと融合し、最もエキサイティングで、未来のある仕事へと生まれ変わろうとしています。


変化の真っ只中にある、面白くて、未来のある業界で。

あなたも、私たちと一緒に「新時代の現場監督」として、未来の働き方を創っていきませんか?